Malmö University
Sweden Report 2026
予防歯科の本質にふれる5日間
マルメ研修レポート
“予防の本質”を学びにスウェーデンへ
2026年6月21日(日)〜6月28日(日)、スウェーデンのマルメ大学で『マルメ研修2026 予防歯科の本質にふれる5日間』が開催されました。この研修の目的は、予防の本質を理解し深めること。スウェーデンでは、なぜ人々が健康な歯を維持し豊かに過ごせるのか。方法だけでなく、考え方そのものを学びに行きました。ここでは研修の内容を簡単にご紹介します!
- 開催期間:
- 2026年6月21日(日)〜 6月28日(日)
- 場所:
- スウェーデン マルメ大学歯学部
- 参加人数:
- 53名 スタッフ6名 通訳2名
ご協力いただいた主な担当講師


Sweden Report 2026
レポート
5日間の研修プログラム
program

- 歯科医療の本質
- マルメモデル・歯学部の教育方針
- う蝕疫学
- だ液検査

- 食事とカリエス
- カリエス予防とナショナルガイドライン
- サルートジェネシスとヘルスプロモーション
- MI/MIのワーク

- 午前
マルメ大学歯学部ツアー
・高齢者施設の見学
・公立歯科医院の見学 - 午後
フリータイム

- 世界的な視点からみた歯周病
- 歯周病およびインプラント周囲疾患の予防
- 欧州歯周病学会のガイドライン
- 歯周病学における重要な治療決定

- カリエスリスク評価データ分析
- 酸蝕症 トゥースウェア
- 歯科医療における将来の傾向
- 質疑応答
研修レポート
report

マルメへの旅、スタート!
今回の研修に参加してくださったのは、53名の歯科医師、歯科衛生士のみなさん。株式会社オーラルケアからは6名のスタッフが同行しました。羽田空港からデンマークのコペンハーゲンまでは直行便で約14時間。そこからバスに30分ほど乗り、スウェーデンのマルメ市に向かいます。ホテルに着くと、すぐにウェルカムパーティーが! マルメ大学の先生方とさっそくお話することができました。

歯科医療の本質
マルメ大学の学部長Pre Alstergren氏から歓迎のご挨拶があり、研修がスタートしました。まずは、Dan Ericson先生による「歯科医療の本質」についての講義から。「エビデンスは歯科医療のピースの一つに過ぎません。全体像を把握するには、自分たちでこのピースを組み立てることが大切です。私たちはそれをお手伝いします」というメッセージが伝えられ、研修内容をどのように捉え、学びを深めていくべきかという方向性が示されました。また、「カリエスはこんなにシンプルな疾患なのに、なぜ世界中で蔓延しているのか」「補綴や保存、治療技術が進歩した今、本当にカリエスやペリオは解決したのか」といった本質を突く問いかけもあり、非常に印象的でした。

マルメモデル・歯学部の教育方針
マルメ大学では学生が自ら能動的に考え、主体的に学ぶ手法(challenge-Based Learning)が取り入れられています。受け身の授業ではなく、「問いを通じて学習者自身が考える」よう教育がされているのです。今回の研修も私たちに考えさせる形で講義が進められることが多く、マルメモデルを体験しているかのようでした。

新3年生歯科衛生士モデル
スウェーデンには歯科衛生士になるための国家試験はありません。学校では、国家試験対策の勉強ではなく、エビデンスに基づいた口腔の健康を高める方法を学びます。学生のうちからメンターをつけて実際に患者さんを診るなど、卒業したらすぐに一人前として働けるよう、さまざまな工夫がなされていました。

う蝕疫学・カリエスリスク評価
予防先進国のスウェーデンでも、カリエスを発症する方はいます。ただ年齢別のカリエス発症率などがしっかり記録・分析されており、「国として状況を把握している」ところが日本と大きく違いました。
講義の後は、Viveca Andersson Plyming先生の指導のもとだ液検査を体験! 「自分の口で検査をするのは初めて」という参加者もおり、とても盛り上がりました。
フィーカ&ランチ
毎日10時と15時はフィーカの時間。フルーツやパンなどをおいしいコーヒーと共にいただきます。量が豪快で、先生方は「研修中はお腹をすかせないよ!」と胸を張っていました。
ランチはマルメ大学の学食を。ポテトケーキ(マッシュポテト)が日本のライスのような役割です。こちらももちろん大盛!


食事とう蝕・フッ化物・遺伝子の役割
スウェーデンが予防に力を入れるまでの背景を学びました。多くの人がむし歯になっていた時代に行なわれた「ビペホルムスタディ」、その結果をふまえて実施された「土曜のキャンディ」「フッ化物レディ」など。興味がある方は、ぜひこれらのワードを調べてみてください!

う蝕のナショナルガイドライン
2021年に改訂された、う蝕のナショナルガイドラインについて解説していただきました。改定のポイントは、「科学的エビデンスに基づいていること」「費用対効果が確立していること」。人々がよりよい口腔の健康を目指せるように、内容が更新されています。

サルートジェネシスとヘルスプロモーション
サルートジェネシスは、日本語に訳すと健康生成論。「どうすれば健康な状態を維持できるか、高められるか」を考える理論のことです。予防の先にあるヘルスプロモーションを目指しているスウェーデンでは、「病因論でリスクファクターを診ること」だけでなく、「健康生成論でその人を取り巻く環境を見ること」にも力を入れています。

MI(動機づけ面接)のワーク
ヘルスプロモーションを実施するにあたり、欠かせないのが「その人のやってみたい気持ち」を引き出すこと。そこで重要視されているのが、MI(動機づけ面接)です。研修では、実際にMIワークも行ないました。とくに盛り上がったのは、オープンQuestionを考えるディスカッション。「歯肉からの出血の心配はありますか?」という質問を、オープンQuestionにするにはどうしたらいいか? みなさん笑顔で意見を交わしていました。
マルメパーティー
来賓であるマルメ市の責任者Olaさんから、「マルメは日本、東京と関係性が強い都市なんです」とスピーチで教えていただきました。その後講師の先生方と一緒にシャンパーンで乾杯! 参加者同士の交流もさかんで、楽しいひとときを過ごせました


マルメ大学歯学部ツアー
歯学部の3年生にアテンドしてもらい、マルメ大学歯学部を見学。各学年のカリキュラムについて具体的に教えていただきました。歯科医師としての倫理観や、患者中心の考え方を育むための土台づくりとして、とてもすぐれた教育システムだということがわかりました。


高齢者施設の見学
マルメ市内にある高齢者施設へ。ここでは入居者が若い頃に親しんだインテリアを再現した部屋があったり、「生活を楽しむこと」を支援する専門スタッフがいたり。病気や障害に焦点を当てるのではなく、その人が健康で豊かな生活を送るために何ができるのかを重視していることがわかりました。

公立歯科医院の見学
提供されているサービスについて、デンタルナースの方からお話をうかがいました。院内は各ユニットが個室になっており、シンプルながら広々とした空間が印象的。歯科器材や材料が患者さんの見えるところに置かれておらず、清潔感もありました。
午後はフリータイム
3日目の午後は自由時間。隣国のコペンハーゲンまで足を伸ばす人、マルメの市内を巡る人、先生のご自宅に遊びに行く人、お土産を購入する人など、各自のんびりすごしました。
お土産の一番人気は、やっぱりダーナラホース! 他にもフッ素濃度5000ppmの歯磨剤や、カレス・キャビア(たらこペースト)を購入する方もいらっしゃいました。







世界的な視点からみた歯周病
4日目は、Aleksandar Milosavljevic先生により歯周病についての講義が行なわれました。内容は、歯周病、インプラント周囲炎、ガイドラインに基づいた治療決定など多岐にわたります。歯肉炎と歯周炎の違いや、「歯肉炎の時点で対処すれば、健康な状態に戻せる」という内容について解説していただきました。さらに、最新の歯周病のガイドラインにも触れつつ、「診断することがすべてではない」と強調される場面も。「患者さんの病態だけではなく、生活背景や行動も含めて総合的に評価することが大事」と、繰り返し話されていました。講義中はテーマごとに質疑応答の時間が設けられ、参加者一人ひとりが理解を深めながら学ぶことができました。
参加者同士の懇親会
日本人の参加者のみでパーティーを開催。研修も4日目になるとみなさん緊張が溶けて和やかな雰囲気に。研修で印象に残ったことや、これから日本に帰って実践したいことなどをテーマに盛り上がりました。


カリエスリスク評価データ分析
初日に行なっただ液検査の結果が、判定付きで返却されました。判定してくれたのは、だ液検査の実習を担当してくれた先生。スウェーデンのリスク判定はとっても厳しく、「迷った時はリスクを高く見積もる」ということが徹底されていました。

酸蝕症・トゥースウェア
摩耗・咬耗・酸蝕症について、そのメカニズムや原因について詳しく学びました。これらは複数の要因が組み合わさって起こるため、原因が分かりにくい現象です。また患者さんからモチベーションを引き出し、行動変容をつなげることが難しいことから、専門家の間でも継続的に議論されているテーマだと知りました。

歯科医療における将来の傾向
講師の先生方がこれからの歯科医療の可能性や展望をお話ししてくださいました。常に未来に目を向け歯科の可能性を広げる視点は、私たちに希望を与えてくれます。
Q&A
参加者のみなさんから事前に募った質問に、先生方が回答してくれました。みなさんとても熱心で一つひとつの質問に丁寧に回答してくれるため、時間がなくなってしまうアクシデントも(笑)。充実した研修の締めくくりとなりました。



バンケットパーティー
参加者のみなさんはドレスアップして参加。Anders Hedenbjörk Lager先生より、一人ひとりに修了証が手渡されました。先生方が全員参加していたので、個人的に写真を撮ったり質問をしたりと、思い出に残る時間になりました。


大学生のように朝から夕方まで通った研修が終了します。たくさんの学びと希望が得られた5日間でした。研修の最後に講師の先生と参加者全員で記念撮影!

充実の5日間、終了!
スウェーデンのマルメ市から、隣国デンマークのコペンハーゲン空港へ。ここでデンマークのお土産を購入する方も♪ 予防の知識と楽しい思い出とともに、日本に帰りました。
Faculty Members
講師紹介
今回の研修のために各専門分野の講師の方に講義いただきました。充実した学びをありがとうございました!

Prof. Dan Ericson

Dr. Nina Lundegren DDS

Dr. Amela Fisic RDH

Dr. Anders Hedenbjörk Lager

Dr. Marie Nordström

Kerstin Larsson DDS

Dentalnurse Linda Enetoft

Viveca Andersson Plyming

Matin Farzad DDS

Dr. Aleksandar Milosavljevic DDS

Emelie Stenberg RDH

Joy Malmberg DDS
Interview
参加者インタビュー
木村恵美さん
菰野きむら歯科 歯科衛生士
スウェーデンで聞いたリアルな声を患者さんに伝えたい
マルメ研修に行ったら、絶対にやりたかったことがあります。それは、街の人にインタビューをすること。3日目の午後が自由時間だったので、「メインテナンスに行っている? 行っていない?」と書いたパネルを作り、街の人に声をかけて当てはまるほうにシールを貼ってもらいました。なんと58名もの方が回答してくれ、メインテナンス受診率は92.5%という結果に! 予防が特別なものではなく、生活の一部になっていることを実感しました。これからは患者さんに「スウェーデンの人は歯を守るためにメインテナンスに行っているんですよ」と声を大にして伝えたいです。インターネットで見つけたスウェーデンの情報を伝えるのと、自分で実際に聞いた生の声を伝えるのとでは全然違いますよね。リアルな声を聞けて本当によかったです。
石川健先生
我孫子健康歯科 院長
積み重ねてきた予防への自信が深まりました
分院の歯科医師と3名でマルメ研修に参加しました。私は10年前にも現地を訪れ、その学びをもとに予防歯科を実践してきましたが、今回改めて本場で予防を学び「自分たちが目指してきたことは間違っていなかった」と心から確信することができました。積み重ねてきた取り組みへの自信が深まったので、これからは患者さんに予防の価値をさらに熱意を持って伝えていきたいと思います。またMIやチャレンジベースラーニングについても、医院で少し意識していた取り組みではあるのですが、手法だけでなく本質まで理解できたことが大きな収穫でした。この学びをチーム全体で実践し、患者さんが「予防って楽しい」と感じられる、より魅力的な医院をつくっていくことが今から楽しみです。
中野晶子先生
なかの矯正歯科 院長
現地で過ごした時間のすべてが、一生の宝物です
矯正治療でせっかく歯並びがきれいになっても、むし歯や歯周病になってしまう患者さんを何とかしたい。その想いから、憧れだったマルメ研修に参加し予防歯科を本格的に学ぶことを決意しました。私は参加者の中で最年長だったと思います。30年ぶりの海外、しかも一人での参加はとても不安でしたが、その不安はすぐに期待へと変わりました。参加者の皆さんと交流を深め、スウェーデンの先生方にも積極的に質問し、直接対話できた時間は本当に貴重でした。矯正治療中の予防に活かせる学びを数多く得られただけでなく、新しい仲間との出会いや現地で過ごした時間すべてが、一生の宝物です。「思い切って参加して本当によかった!」と心から思える、充実した忘れられない研修になりました。
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